俺様ドクターの溺愛包囲網
「服の上からで十分だ」
「あっ……そうなんですね!」
それなら早く言ってくださいよ。私の覚悟はいったい……。
「大人しく寝てろ」
「は、はい、すみません」
あぁー、恥ずかしい。まさに穴があったら入りたい気分だ。先生の顔が見られない。そんな混乱する私とは裏腹に、先生は平然と聴診器を当てる。鼓動が早いのはバレてしまっただろう。
でも今焦ったところで、誤魔化しようがない。この状況で、平常心でいられるはずないんだから。
「とりあえず、採血もしておいたから。そろそろ結果がくると思う」
聴診器をしまいながら、先生がホッと息を吐きながら言う。
「ご迷惑おかけしてすみません」
「お前は頑張りすぎだ。前にもあっただろ、こんなこと」
その発言を聞いてやっぱり、と確信した。先生も覚えていたんだ。
「ちょっとは人に甘えるってことを覚えろ」
「そう言われましても……」
甘える相手なんていない。私だってたまには誰かに寄り掛かりたいと、心が弱るときもある。でも頼れる親戚もいないのだから仕方ない。私が頑張らなきゃ。真宙のために。
「大丈夫です。まだまだ頑張れますから」