俺様ドクターの溺愛包囲網
頼りない笑みを張り付け、ガッツポーズをしてみせる。けれど先生は冷めた視線を向けたまま。きっと強情な私に呆れているんだろう。なんだか気まずくて、視線を逸らした次の瞬間、予想外の言葉が飛んできた。
「俺でいいだろ。頼れ」
「え?」
「じゃあ外来があるから行く。また後で様子見に来るから、大人しくしてろよ」
ぶっきらぼうに言うと、先生は医局を出て行った。
今なんて言った? 俺でいいだろうって? それってどういうこと?
◇◇◇
「ふーん、なるほどねー」
美和がコーヒーカップに口をつけながら、視線だけ向ける。その目は明らかに面白がっていて、獲物を捕らえた狩人のよう。
「あんなに毛嫌いしていたのに、今度は好きで好きでたまらなくなったわけね」
「話盛りすぎ。そこまで言ってないでしょ」
翌日の昼休み、体調も回復し、一人でこの感情を抑え込むのが難しくなった私は、美和を近くのカフェに呼び出した。こんな風に外でランチをするのは、恐らく初めて。適当に入ったお店だけど、若いOLさんやカップルで賑わっている。