俺様ドクターの溺愛包囲網
その声に小さく飛び上がる。
「ひ、日比谷先生。べ、別にニヤニヤなんて……」
「ほら、診断書」
必死に言い訳していると、一枚の紙を突き付けられた。よく見るとそれは午前中、私が頼んでおいたものだった。
「え? もうできたんですか?」
「急ぐんだろ」
「あ、ありがとうございます」
時間を見るとお昼少し前だった。あんなこと言っていたのに、結局やってくれたんだ。意外。それに仕事が早い。でもこれで患者さんが退院するときに渡せる。
「すぐに病棟に持って行ってきます」
急いで席を立つと、日比谷先生が心外なことを口にした。
「腰掛けだと思ってたが、仕事はちゃんとこなすんだ」
「はい?」
この人、また私に腰掛けって言った? 私はムッと顔をしかめたまま反論した。
「何度も言いますが、私はこの仕事を腰掛けだなんて思っていません」
「みんなそう言うんだよな。でも実際、医者と結婚してさっさと辞めていく。そういうあざとい女が、俺は嫌いなんだよ」
なに自分の価値観押しつけているの? 今までいた秘書の子たちと一緒にしないでほしい。