俺様ドクターの溺愛包囲網
先生はこれからもこの病院にいて、私は彼の秘書で。その事実だけは、この先も変わることはないだろう。それにイケメンのくせに、女性関係の噂は全くといって耳にしないし。だからそんなに焦る必要なんてないと思う。
「あんた、このまま何も変わらないって、高を括ってるでしょ」
「え?」
「院長の容態、よくないのよ。もうあとどれくらいもつかって話。だから跡継ぎ問題も、今内輪で話し合いがもたれてるところだって」
美和の言葉に、目を剥く。それって、この前谷さんが言っていた話……。
「もし日比谷先生が後継者ってことになったら、安易に付き合うこともできなくなるんじゃない? きっと外野がうるさいと思うわよ」
外野、つまり日比谷先生の義理のお母さんや、親族ってこと? 先生が、遠い人になってしまうってこと?
いつも先生は気づけば医局にいて、気軽に声をかけられて、たまにご飯を一緒に食べたりして。それが当たり前になっていたけど、もし先生が院長になったら、そんな日常を送れなくなってしまうかもしれない。想像して、頭が真っ白になった。そんなの嫌だ……。
「彩の素直な気持ち、伝えておいたほうがいいんじゃない?」