俺様ドクターの溺愛包囲網


さっきまでとは打って変わって穏やかな口調に変わった美和を前に、私はうなずいた。先生を尊敬しているって言おう。好きだって伝えなきゃ――。

美和と別れ、医局へと戻る。先生に会ったらなんて切り出そう。

よくよく考えたら自分から男性に告白なんてしたことがない。学生のときもたいして恋愛もしてこなかったし、なにより彼氏を作ることより、友達と遊ぶ方が楽しかったから。それに人を好きになるっていうのがよくわからなかった。

社会人になってからはさらに恋愛とは縁遠くなってしまったし……。もはやこれは初恋レベル。登山未経験者が、いきなりエベレストを目指すようなものなのでは。

「なんか胃が痛くなってきた」

いつどこで先生に会うかわからないと思うと、通い慣れた院内でキョロキョロしてしまう。

「またどこか悪いのか?」

胃のあたりを撫でながら、医局に着いたところで、後ろから声をかけられ、その場で小さく飛び上がる。

「せ、せんせ……っ!」

サーっと血の気が引くのを感じる。そんな私を先生が腰を折り、まじまじと見つめる。今この状況でその美しい顔面はきつすぎます。心臓が破裂しちゃいそう!


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