俺様ドクターの溺愛包囲網
「顔色悪いぞ。ちゃんと食って寝てるか?」
「は、はい、寝てます、食べてます」
「なんだそのロボットみたいな返事は」
口の端をわずかに上げ、ふっと笑う。その破壊力に、くらっとした。ダメだ、先生といると、どんどん体調が悪くなりそうだ。先生はまさか医者の自分が、一人の女性を体調不良に陥れているとは思いもしないだろう。
「軽い貧血があるみたいだから、薬だしてもらうか?」
「い、いいです」
「言うと思った。相変わらず強がりな女だ」
鼻で笑って先生は医局のドアに手をかける。それを見て、ハッと我に返った。中に入ってしまったら他の先生もいるし、谷さんの目も光っている。言うなら今だ。
だけどなんて? まさかこんなにも早く遭遇するとは思わなかったから、心の準備が。
でも、言うんだ、彩!
「あ、あの! 先生!」
「なんだ?」
「その……えっと、」
もごもごと口ごもる私を、先生がじっと見下ろす。その間も、背中に汗がダラダラと落ちる感覚がする。
「また診察されたいのか?」
「ち、違います!」
「じゃあなんだ。さっさと言え」
「あの、明日の夜、うちに来ませんか!? 腕を振います!」