俺様ドクターの溺愛包囲網


怖気づいた自分の声を耳にして、落胆する。いざとなったらこれだ。こうなったら家で腰据えて、目を見て言おう。

明日の自分頑張れ、と心の中でエールを送りながら、先生の様子をおずおずと伺うと、先生は顎を撫でながら考えているようだった。

「明日は当直だ。俺の勤務、知ってるだろ。今夜行く」

えー! こ、今夜……!心臓がまたバクバクしてきた。ということは、やっぱり今日の私が頑張るしかないというわけか。

「わ、わかりました。用意しておきます」

上ずる声でそう言うと、先生は私の頭をポンと一撫でして、医局へと入って行った。緊張する。もうすでに、胸がいっぱいだ。ご飯、何作ろう……。

◇◇◇

定時に仕事をあがると、そのままスーパーで買い出しをし、大急ぎで食事の支度にとりかかった。
何を作ろうか考えた末、結局定番の和食。

豚汁に、きんぴらごぼう、炊き込みご飯、それと、お浸し。あまりにいつも通りすぎて、作り終えてから、これでいいのかと一瞬頭を抱えたが、先生は質素なごはんでも、いつも美味そうに食べてくれるし、きっと気に入ってくれるだろう。


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