俺様ドクターの溺愛包囲網
先生が嬉しそうに食事をする顔を浮かべながら、三人分の箸やグラスを食卓に並べていく。
真宙はまだ帰っていない。最近少し帰りが遅いような気がするけど、いったいどこで何をしているんだか。
その時、玄関のチャイムが部屋に響き渡った。
「来た!」
ドキドキし始めた胸を携え、エプロンのまま出迎える。勢い良くドアを開ければ、白衣を脱いだだけの、カッターシャツにスラックス姿の、先生がいた。
「悪い、遅くなった」
「いえ、どうぞ」
緊張で、声が上ずる。自分から誘うのは初めてな上に、今日は想い伝えるというミッションが待っている。
「まだ真宙が帰ってないんです」
「そうか」
「先、食べますか?」
「いや、いい。待ってよう」
そのあと会話が弾まず、食卓を囲んだまま静寂が続いた。告白するなら、真宙がいない今がいいのか?だけどなんて切り出していいかわからない。それに振られたら、気まずい夕飯になってしまう。もう少しタイミングをみよう。けれど、この空気が重苦しい。なにか会話を……。
「あの、先生のお母さんはお料理上手だったんですか?」
「え?」