俺様ドクターの溺愛包囲網
二人で同時にハッとし、至近距離で目を合わせたまま、きょとんとする。
「私のかもしれません。ちょっとすみません」
どうしてこんな時にと、心の中で愚痴りながら、いまだ鳴り響くスマホを探すと、カバンの中にあった。取り出しディスプレイを見れば、知らない番号からで、ドキッとした。
「どうした?」
画面を見つめたまま立ち尽くす私に、先生が心配そうに声をかける。
「あ、いえ。知らない番号だったので。誰だろう」
「出てみろ」
言われるがまま、通話ボタンを押す。嫌な胸騒ぎがする。
「はい……宮永です」
「西警察署のものです。宮永真宙さんのご家族の方ですか?」
警察? どういうこと?
「真宙は弟ですが……あの、弟がどうかしたんですか!?」
「実は真宙さんが自転車に乗っていたところを、事故にあいまして」
「事故!?」
思わず、電話口で叫んでしまった。そんな私に、いつの間にか近づいてきた先生が、そっと肩に手を置く。
「今、救急搬送されましたので……」
どうして? どうして真宙が? だいたい自転車ってどういうこと? 自転車なんて、持ってないじゃない。
「もしもし、宮永さん? 聞こえてますか?」