意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!
年下恐怖症を発症してます
「今度、一緒に出掛けませんか? 」
昼休み。
ランチに誘ってくれた帰り道、その言葉に思わず固まってしまう。
営業の堺くん。
緊張しているのか、ほんのり染まった頬は可愛いと思う。
こうやってランチも何度か誘ってくれて、もちろん嫌じゃない。会話だって楽しい、と思う。
「それは……」
「デートです。だめ、ですか」
立ち止まった時点で、返事したようなものだった。
でも、やっぱりそれを言わなきゃ終わらないし、何より失礼だ。
「……ごめんなさい」
「気軽に遊びに行くだけでも? こんなふうにごはん食べるのが、休みの日か夜ってだけで……って嘘ですけど。それを打破したくて、誘ってますもんね。でも、それなりに感触よくないと言わないです」
そうだよね。
仲はいい方だと思う。
部署は違うけど、会えば挨拶だけじゃなく立ち話だってするし。
だから、堺くんのことが嫌なんじゃない。
自分で分かってるのに、それでも変わらない自分こそ嫌なのに。
「……噂、聞きました。でも、俺は大丈夫かなーって。自意識過剰だったな」
「…………」
そんなことないよ。
そんなんじゃないの。
それも本心なのに、言えるわけない。
「本当だったんですね。年下嫌い、って」
・・・
「正しくは、“苦手”なのに……」
誘ってくれた人には同じこと。
それでも、そう愚痴らずにいられない。
「そのくせ、年下キラーだよね。輝って。社内・取引先で何人目? モテて羨ましいくらいだけど」
「呪いだよ……そうとしか思えない」
仕事帰り。
堺くんと同じ、営業部の友美に付き合ってもらえてよかった。
呪いが発動した日に呑まずにいられるものか。
「まーね。輝が好きになる落ち着いた年上からは、振られまくってるもんね。もう、いいじゃん、年下でも。年下がやんちゃだとは限らないんだし。年上だって阿保はいるわよ。当たり前だけど」
「……それも、分かってるんだけど……」
もしかして、好きになってくれたのかな……そう思うと、身体が硬直してしまう。
何よりも先に年齢をチェックしてしまうし、年下だって知ってしまうと、私から好きになることもない。ううん。
「私、人を好きになったことないのかも」
「それだ。堺くんにそう言っとけばよかったのに。好きな人がいるからって」
「全然、“それ”じゃないじゃん。……でも、そっか。年下だって断られて、嫌な気分だったよね……」
「ま、断られれば、何だろうと嫌な気分よ。むこうも噂知ってて近づいたんだから、もう忘れな? ほら、呑め呑め」
呑む呑む。
呑むしかない。
「でもさ、好きな人いるって、まるきっきり嘘でもないでしょ? 取引先の池田さん。実は好きでしょー」
「池田さん……素敵だよね……。大人で、ちょっとクールに見えるのに、たまに笑うと優しくて……きゅん……」
酒が進むと促されるまま、はぐらかしてた本心がぽろぽろ出てくる。
「池田さん年上ぽいけど、輝に気があると思うよー? いっちゃえいっちゃえ。んで、呑め」
「……いいの。見てるだけで幸せなんだもん。大人っていいよね。呑む……」
年上から好かれるわけない。
いいんだ、目の保養だけでも十分癒されてるから。
(ん、呑もう……)
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