意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!
「ごめんね、こんな時に。でも俺……すごく怖かったよ」
トレーにカップを載せて、テーブルまで行こうとする動作の中に、ほんのちょっとこくんと頷いたのが入ってたけど。
「再会したのは嬉しいけど、もし輝に男がいたらどうしようって。……どう、奪ったらいいのかなって」
はっきりと肯定できないのは、本当に信じていいのか不安だから。
「……ありがと」
不自然なタイミングで、代わりにトレーを持ってくれたことへのお礼を言ったりする。
じゃないと、他に何を言っていいのか分からなかった。
「諦めるのなんて、できることならとっくにやってる。どうしても輝じゃなきゃダメなのに……こんなマイナスすぎるスタートで、どうやったら少しずつでも輝に好意をもってもらえるんだろって」
突然の告白――ううん、陽太くんに会ってから、最初からずっと告白され続けてる。
反応を先送りするみたいにカップに手を伸ばしたけど、震えて上手く持てなかった。
「もちろん、優しくしたいし、好きだって伝えたいし、大切にする。でもそうじゃなくて、輝がどんな男が好きか知らないから……その先は、考えても分からなかった」
これは、本当にあの陽太くんなのかな。
あの、気弱だった小さな陽太くんとも。
意地悪で乱暴になった、その後の彼とも違いすぎて、頭が混乱する。
「……うん。そうだよね。普通は、好みじゃなかったらそこで終わりなんだろうけど。でも、俺にはそれがないんだ。もう二度と輝に会えないなら……何度もそう思って、他の人と付き合ったって全然ダメだった。無理、なんだよ」
だから、これは知らない男の人だ――……。
「他じゃ、輝の代わりになんて到底ならない。俺のどこも、何も埋まらない。……俺、輝だけ足りない。ずっと、すごく……輝が不足してて辛かった」
――そう、思えたらよかったのに。
「輝は、どういうのが好き? どんなことされたら、キュンとするのかな。もし知れたら……俺、何だってするのに。輝の望みどおり、何でも」
告白の内容は甘い。
でも、どこか最も大事なところを麻痺させられたみたいに、思考も動作も鈍くなる。
「ど……どうして? 子供の頃好きでいてくれたのは分かった。あのことも……言ってることは分かった。でも、いくら私が“変わらない”って言ったって、大人になってあの頃のままってわけじゃないのに……再会したばかりで、そんな」
そんな、愛おしそうに――そうに、じゃない。
愛しいってそのままの瞳で、見つめ続けていられるの。
「もちろん、今の輝は大人だよ。あの頃も可愛かったけど、今はもっと女の子。それを見て気持ちは変わらないし……というか、一目惚れしたみたいな感覚なのかな。見た目もだし、こうして話して、触れて……やっぱり、好きだ」
そんなことって。
私が、そんなこと言われるなんて。
「説明、難しいんだけど……俺にとって、輝は特別。同じクラスの中から、どの子にしようかなっていう感じにはならないんだ。輝がいるのに、他を考えたり比べたりする感覚が俺にはない……っていうのが、一番しっくりくる、かな」
――だから、教えて? 何でも言って。
「だから、その為に俺にできないことってないんだよ。輝は、俺が欲しくて欲しくて堪らない女の子なんだから」