意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!
・・・
それから、よくやり取りするようになった――のは、陽太くんだ。
友美はああ言ってくれたけど、私用で池田さんに連絡する気にはなれなくて。
「何かあれば」が「それを口実にしていいですよ」の意味だってことは知ってる。
光栄だとは思うのに、どうして躊躇してしまうんだろう。
(素敵な人なことは間違いないし、あんなに憧れてたのに)
「好き」っていう感情とは直結しない?
私の中に、それを感じる部分が欠けてる。
それが一番しっくりくるけど、自分を誤魔化す為の最適な説明だってことも自覚してる。
『輝……? 元気ないね。何かあった? 』
陽太くんは、あれからずっと気に掛けてくれて、今もこうやって安否確認をしてくれてる。
「あ、ううん。仕事でね、ちょっと」
「何もないよ」は陽太くんには通用しない。
私本人よりも極度の心配症なのか、「大丈夫」「平気」の単語を出そうものなら、優しく激甘な追及から逃げられなくなる。
『……そっか。あのさ、輝。実は、お願いがあるんだけど』
「なに? 」
食い気味に訊ねたのは、そんな返事で納得してくれたのを逃さない為。
バレバレだったんだろう、クスッというよりしっかり笑われてしまった。
『今度の休みか、仕事帰りに付き合ってくれないかな。アフタヌーンティーってやつ』
どうしよう。
嘘だってこともバレたかな。
動揺して紅茶を一気飲みしてると、陽太くんからは意外な単語が飛び出した。
『クーポン貰ったんだ。甘いもの好きだし行ってみたいけど、調べてみたら、おしゃれっていうよりはすごい可愛いカフェで。俺一人じゃちょっとね。一緒に行ってくれない? 』
「いいの? あ、でも。それくれた人って、もしかしなくても」
『え? お客さんだけど』
(……だろうなー)
ブランケットを膝から胸まで上げて、無言になった理由にする。
陽太くんは今ここにいないのに、チラッと目を逸らした。
この部屋に一人でいても震えずにいられるようになったのは、彼のおかけだ。
だから、そんなお願いとも言えないことくらい喜んで受けたいけど――というか、疲れて落ち込んでるんだって思って、わざと誘ってくれたんだってことも気づいてる――けども。
「……えっと……それ、その人陽太くんと一緒に行きたかったんでは……」
恐らくそういう乙女チックなカフェ、男性一人で入りづらいってことも想像つくわけで。
二人分のチケットみたいなのを貰ったんだとしたら、それはそうだろう。
『んー? でも、誘われなかったよ。誘われてたら断ってるし。店にも許可取って貰ったもん。お客さんと出掛けるなら、返してこいって言われたんじゃないかな』
陽太くんの言うことは正論だ。
(えっと。でも、それ絶対)
「……確信犯だよね? 」
空いたのは、ほんの一瞬の間。
すぐに返ってきた低い爆笑が、電話だか電波だかに乗って、陽太くんが今可愛い悪魔の顔してるんだって妄想させる。
『やっぱ、バレちゃった……? だって、俺は輝と行きたいんだもん。貰った瞬間、輝とデートできるかな、やったーって思ったし』
(……うあ。そんな素直に、悪い顔認めないでよ)
『紅茶、たくさん種類あるんだって。俺が飲んだって、違いなんか分からなくて勿体ないしさ。それに、疲れた時は甘いの、って言うでしょ』
「……うん。ありがと」
私も素直にお礼を言えたのは、悪魔だけじゃなく天使の陽太くんも見えるからだ。
あと、それから――既に糖分補給しすぎて、回復どころかオーバーヒートしそうだったのと。