意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!
「……あ。ねね、輝」
お茶を注ぎに来てくれたのは店員さんなのに、チラッと見上げたきり。
本当に私としか少しも話す気がないのか、しきりに名前を呼ばれる。
「じゃーん」
「え? ……あ、それ……」
陽太くんの鞄から、効果音つきで登場したのは。
「ありがとうございます。何か、白か水色のもの、ですね」
店員さんがにこっと笑って言ってくれ、首を傾げた。
出てきたのは、二匹のテディベアだ。
確かに、白くてもこもこ。まるで――。
「うん。思い出した? あの時のと似てるよね。見つけて、あ!って思って」
せっかくの店員さんの説明なんて聞く耳持たない感じで、二人しか知り得ない話題へと繋ぐ。
「そ、そうだね。え、と、で……? 」
まさか、それで衝動買いしただけ――もあるかもしれないけど、今店員さんが来てくれたタイミングでテディベアを出したのには理由があるだろうに。
「で! ここね。何か白か水色のを持ってくると、お土産もらえるんだって。せっかくだから、輝、貰っときなよ」
あ、なるほど。
ここのお店のイメージカラー。
「それから、もしよろしければ、お写真撮らせていただければ……」
「いいですよー」
陽太くん、よく調べてるなー……って。
(…………ん? )
「……写真? 」
「はい。インスタグラム用に。素敵なカップルなので、ぜひ」
インスタ……って。
「え、そ、その。でも!! 」
「えー? いいじゃん、撮ってもらおうよ。別に、顔出ししなければいいんだし。俺、後から見てニヤニヤしたい。ね? 」
顔出しは困る。
っていうか、恥ずかしすぎる。
ここ、すこい人気店みたいだし。
でも、顔出さなかったらいいってものでもな……。
「ほらほら、輝。こっち向いて……ん。で、こっちの熊さん持って。ね、これでどう? 横から撮ったら、写ってないはず」
「お顔が出ないようにお撮りしますね」
(あー、確かにこれなら熊に隠れて……)
――って、違う。
(……こ、こ、これは……普通に見て)
――キス、してるみたい、では。
お互いの頬に触れるみたいに交差して持たれたテディベアが、ちょうどいいくらいに顔を覆ってる。
ギリギリ見えるか見えないか――それが妙なスリルを感じさせて、心臓の音を煽り立てる。
「ウェディングフォトみたいです!! 」
何が何だか分からない本人を差し置いて、店員さんの興奮した声が店内に響く。
もしかしてっていうか、絶対、ものすごく注目されてるんじゃ。
(………ふわふわのもこもこ!! 今、頬っぺたに触れてるのは、ふわもこだから!!……いいから、早く撮って!! お願いしますお願いします!! おねが……)
「真っ赤になってくれるの、幸せ。……輝にそんな可愛い顔で、そんな可愛いことされたら俺」
――もう、あんまり可愛くいられる自信、ないかも。