意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!




だから、だからこそ、こんなの卑怯すぎる。
だって、つまり私はただ――……。


「もっと押していいんだって、言いに来てくれた……って思っていいかな。俺、都合良く考えすぎ? 大丈夫? ん……ならさ、輝」


――流されたんだって思えるように、責任を押しつけてるだけ。
どうやったって、それは私の判断でしかないのに、決める勇気が出なくてもっと押してほしくなっただけ。
狡すぎて、意気地無しで嫌になる。


「輝が狡くて弱くなっちゃう理由が俺なら、俺はすっごい嬉しいけどな。そんなことで泣かれちゃったら、可愛くて困るくらい」


泣いてた……?
驚きのすぐ後に嫌悪感が押し寄せてきて、袖でぐっと拭おうとしたのをやんわりと止められる。


「俺と付き合うって言って。言わないと、ここでキスしちゃうかも」


涙が止まったのは、その指が水滴すべて吸い取ってしまったからだろうか。
それとも、単純にびっくりしたからか。


「なかなか戻って来ないから、何か見られてるっぽいね。どうする? 」

「……どう……」


必要以上の瞬きが擽ったかったのか、陽太くんは笑って――でも、指先は退いてくれない。


「付き合うって言える? それとも、このままキスされちゃう? どっちがいいかな。それとも、どっちでもいい……? だって、輝」


――それくらいには、俺のこと好きだよね。


「……っ、あ、」


つ……と、あまりにゆっくり指が耳や頬、顎へと滑ったのに。
少し嘘くさいくらい傾いて、陽太くんの顔が近づいたのに。


「……ん? なに……?」


その言葉を口に出すのに、息が止まりそう。


「………つ、き」

「……ありがと」


言わなくてもいいように被せてくれて。
それに感謝してしまう自分が嫌で俯いたのを、そっと上向かせて。

よしよしとも、いいこいいことも違う頭の上の手は、昔私が陽太くんにしてたのよりもずっと優しい。
それでいて、掌の熱が伝わってくるほどしっとりした撫で方は、とても子供の手ではできない動きだ。


「約束したよね。絶対、大事にする」


そわそわと指が耳の側を通るたびに聴覚を奪われ、その先は聞こえなかった。

――これ以上ないくらい、大切に大切にするね。

ねえ、大好きだよ。


あ き ら――……。







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