意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!




「……っ、失礼します」


鳴らない着信に気がついたのは、助けを求めてたからだ。
そして、架けてきた相手はもちろん。


「……陽太くん」

『ん? うん。出れないの覚悟で電話したんだけど。もしかして、もう終わりそう? 』


出れないと分かってて架けてくるのにちょっと呆れて、でも彼らしくて笑う。


『……輝? 大丈夫?』


でも、不自然すぎたのかも。
途端に、陽太くんの心配スイッチが入ったらしく、すぐにそう聞かれた。


「……うん。あの……」

『……迎えに行くよ。輝のドレス姿、見たいし』


大したことじゃない。
この前の、知らない男に尾行されたことと比べたらなんてことない。
別に、告白されてお断りして――諦めないって言われただけ。
そこに私の意思はもうないんだから、怯えることなんて何もないのに。


「……ありがと。あ、友美が会いたいって言ってるよ」


なのに、そんな牽制。


『俺も。そこ、輝を口説くのにかなり重要でしょ? 印象良くしとかなきゃ。……待っててね。すぐ行くから、それまで友美さんと一緒にいるんだよ』

「……うん」


友美の細い手がぽんっと肩を叩いた後、すぐに寄せてきた。
その意味も、電話で話した内容の陽太くん部分も、私が動揺してるのも。
全部バレバレだと思うのに、池田さんは何も言わずに微笑むだけ。


「ほら、呑んで待ってな? さすがの溺愛過保護彼氏でも、瞬間移動はできないだろうからさ」

「……ん……」


「呑んでも近づけないから、安心しな」って言われたみたい。
別に池田さんが何かしたわけでもないのに、守るように肩は抱いたままでいてくれた。



・・・




「そろそろ、外で待ってる」

「外、寒いですよ。着いたら連絡されるでしょうから、もう少し中にいては? 」


確かに寒いけど、居心地は遥かにいい。
そんな言い方は失礼だし、池田さんが悪いわけじゃないのも分かってる。
憧れてた人が好きでいてくれて、諦めないほどの気持ちだったことは、嬉しいことだったと思う。
でも、今は慣れてるはずの敬語が不安にさせる。


「まー、輝の彼氏さ。聞いてると、過保護すぎてここまで乗り込んじゃいそうだよね。ちょっと早いかもだけど、出とこっか」


友美もそう言ってくれて、会場から出たのに。


「……あの……?」


どうして、この人まで着いてくるんだろ。


「女性だけでは心配なので。お越しになるまでご一緒します」


こんな真っ昼間、着飾った女性だらけ、それを言うなら男性だってほぼ同数いる場所に、怪しい人が現れるとは思えないけど。
この前の事件を知ってて、本気で心配してくれてるのか、それとも――。


「輝……! 」


彼を見たかっただけ――だけ、じゃなかったりするのかな。



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