意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!
「……ひ、ひな……」
「……うん。ごめん……。予約された名前見て、実際会ってみて……絶対輝だって確信して。名乗るのすっごい迷ったんだけど……どうしても、話したかった」
声が震えたのに、傷ついたみたいに顔が歪む。
どうして、そっちがそんな顔するの。
傷ついたのも、その傷が未だに癒えてないのも私の方なのに。
「どうしても、謝りたかったんだ。謝って許されるわけじゃないし、謝りたいなんて傷つけた方のエゴだって思う。……それでも、伝えたくて」
「…………」
考えたことが顔に出ていたのか、それとも本当にずっと悔やんでいたのか。
再会したばかり、そう告白されたばかりじゃ判断できない。
カラー剤を用意してお客さんの席へ向かう、別の美容師さんと鏡越しに目が合う。
ハッとして、少しわざとらしく「終わりました」を告げるようにそっと髪を撫でられた。
「……輝……」
今度は、完全なるビクン。
それが悔しくて、唇を噛んだ。
そうだよ。私、まだ怯えてる。
年下恐怖症――他の男の子相手なら、まだそんな呼び方で済むけど。
当の本人――当たり前だけど、成長して大人の男になってしまった彼を見てしまうと、そんな自分にムカつくくらい、彼が怖い。
「……どうぞ」
椅子をレジの方向に向けられ、ふらつかないよう言い聞かせながら立ち上がる。
そんなとこ、見せるな。
怖がってるなんて、まだ引きずってるなんて悟られるな。
お金を払ってドアを開けるまで、ずっとそれだけ考えてた。
「輝」
お見送りなんていいのに。
もう謝罪は聞いた。
受け入れるつもりなんかさらさらないけど、もうそれで終わらせて私の生活に入り込まないでほしい。
「お願い。……もう一回、会わせて」
「……もう……」
「頼むから……! もう一回、ちゃんと話したいんだ。なんであんなことしたのか……うん。言い訳、だけど。輝、お願いだから……」
――あきら。
――あきちゃん。
まだ可愛い声が、頭の中で響いてガンガンする。
(あきちゃん、のままでいてくれたら)
そしたら、この再会は飛び上がるくらい嬉しかったし、そもそも疎遠になんかならなかった。
ひな……陽太くん家族の引っ越しは、あの事件後の私の精神をどうにか病まずに留めてくれたんだ。
「許されないのは分かってる。俺の勝手な願いだってことも。でも、あの頃の気持ち、知ってほしいんだ。理解してなんて言わないから」
私だって、このまま年下に過剰反応するのは嫌だ。
治そうって努力したこともあったけど、全然上手くいかない自分を責めるのも。
「理解も許すのもしない。だったら仕方ないね、なんて言わないよ」
「……分かってる。それでも、会えて本当に嬉しい。ありがとう、輝」
――決別しなくちゃ。
過去のトラウマとも、突然現れた知らない人にしたかったこの人のことも。