意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません！！

「……ねえ。さっき、すごい嬉しかったよ」


何だろう。
わたし、何かしたっけ。
わたし、なに――……。


「怖かったって、涙目でくっついてくれて。……俺、少し……少しは輝に頼ってもらえて、好かれてるんだって」


脳がとけてる。
陽太くんの声は聞こえてるのに、内容も理解してるのに、催眠術にかかるみたいにぼんやりしてる。


「付き合えたのも夢みたいだけど。もともと輝って、他人に弱いとこ見せたがらないと思うのに……酷いことした俺に、そうやって甘えてくれるなんてすごく嬉しかった」


改めて言われると、自分でも驚いてしまう。
誰より警戒していたはずなのに、まず一番に頼ってしまうなんて。


「やめないで。……俺ね。大人になった輝に会えて、それだけで幸せだって思ってた。なのにさ」


真っ赤になったのが、自覚したからだって思ったのか、焦るようにまたきゅっと抱いて。


「付き合えて、こうやって抱きしめて……キス、できて。どんどん幸せなことが増えて、大きくなって……もう戻りたくないって気持ちが強くなってる」


どこにも行かないよ。
あ……そういえば。
昔の陽太くんも、いくらそう言ってもあんまり信じてくれなかった。


「嫌われたくない、好かれたい……俺のこと、もっともっと……」


――欲しがってくれたらいいのに。


「ん……昔みたいだね。あの頃の俺も、輝がお姉ちゃんでいてくれるだけじゃ足りなくて……子供だからって許されるギリギリ攻めて、輝を求めてた。ズル賢かったし、か弱くて小さくて可愛いの有効利用、すごい上手だったんだ。……引いた？ 」

「…………何となく、気づいてた」


あんなにうるうるした目でお願いされたら、誰も断れない。でも、それはね。


「そっか。輝、優しいもん。それすら、俺は……」

「聞けるお願いだったからだよ。嫌だったら……嫌いだったら、断ってる」


『いっしょ。あきちゃんと一緒』


私もそうしたかったから。


「陽太くんがそう言ってくれるの、待ってた。……私、狡いよ。陽太くんが思ってたみたいな、優しくて面倒見のいいお姉ちゃんじゃ……」

「……なら、余計嬉しい。同情とか責任感とかそんなのじゃなくて、輝がもっと狡い女の子で……俺のこと、必要としてくれたらいいのに」


狡いって。
思ったより、嫌な子だったよって。
白状してるのに、どうしてよりいっそう愛しそうに目を細めるの。

熱い、熱い、から。
そんな目で見られて、すぐそこに気配と体温を感じて、赤くなっているのは首までで済んでる気がしない。


「あの時は、最大限輝より子供なこと活かして側にいたけど……今は、ちょっとくらい男だって思ってくれる？ 」

「……今更、それ聞くの？ 」


それが一番分かりやすい返事。
可愛くないのに、更にぎゅっと抱きしめる腕から喜びが伝わってくる。


「男だと思ってくれて、真っ赤で……こんなふうにあったかくなってくれて嬉しい。……ね、輝。嫌だったら、我慢しないで止めて？ 」


――俺のこと、止めて。


止められるわけない。
茹で上がって熱るのが嫌じゃない。
今の私は、陽太くんが男の人だってことを受け入れてる。


「……輝……。や、ば……。舌だけでも輝のなかにいるって思うだけで、俺、」


改めて言葉にされると、途端にその行為が生々しく聞こえて。


「……それだけで、脳、イキそう……」


あの時と同じキスだ。
比べものにならないくらい巧みなのが少し寂しくて、一度入ってしまえば同じくらい夢中になってくれてるのが嬉しい。


――そっか。やっぱり私。


「……すき……」