意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!
彼、やっぱり異常でした
「大丈夫か~? それ、“気持ちよくて好き”だったりしない? 」
「……え!? 」
昼休み。
例のごとく友美とランチしてると、当然「溺愛彼氏さん、どうよ? 」って話になり。
あんなそんなことを報告してると、周りを憚らずそうつっこまれた。
「いや、さ。いいのよ。それならそれで、責める気なんか全然ないけど。……でもさ、彼の場合、輝への拘りがすごいから、ちょっと心配で。ごめん」
「ううん。えと、その。それは認める」
「……いいのが? 」
(……それも認める)
あのキスは……よかった。
あの後、照れたようななぜか自嘲するようにも陽太くんが笑って、もう数秒唇が離れるのが遅れてたら――。
私の方が離さなかったかもしれない。
「相性がいいに越したことないよね。で、で? どんなだったのよ」
「ど、どんなって」
だから、すごく。
気持ちよかった。
元彼殺してやりたいなんて、陽太くんは物騒なことを言ったけど。
あんなキスを一緒に学んだ子に嫉妬してしまうくらい、上手で……私こそ彼女を羨んでしまう。
『……あきら……』
うわごとみたいに呼ぶ声は、キスを繰り返す合間に漏らしたとおり、興奮しきっていて。
あれは、あの日以来私の中でキスに分類されてきた行為だったけど。
あんなにも求められたのは初めてで――キスというより、セックスに限りなく近いんじゃないかとぼんやりした頭で考えてた。
だって、陽太くんの言葉を借りれば、身体の一部がナカに――……。
「……分かった。皆まで言うな。すごかったんだね、彼氏」
「ちっ……」
違う、とも言えず。
すごいですとも言えない。
結果、沈黙は肯定とみなされた。
「ま、浮気の心配いらなくてよかったじゃない? その分、輝の負担大きそうだねー」
ニヤニヤ顔を睨みながら、お茶を飲んで誤魔化す。
(……だから、まだ最後までしてないんだってば)
ちょっと残念――本当なのか、大嘘なのか分からないことを思いながら。
・・・
(……好きだから、気持ちいい……)
けしてそれだけじゃないと、大人の私は知ってしまっている。
今まで付き合った人だって、その時は大好きだと思ってたけど、今思うと疑問だし自信がない。
今の陽太くんのことは好きだ。
可愛いだけじゃなくて、すっかり成長した彼は私よりもずっとしっかりしてるし、頼り甲斐があるし、私のこととなるとめちゃくちゃなところも――大体は、愛されてて照れるくらいになってしまった。
だから――……。
「……何考えてるの? 」
今日も部屋を訪ねたまま、ぼーっと突っ立っていた身体を、後ろからふわりと包まれてしまう。
「他のこと考えちゃやだ。俺はこんなに輝でできてるのに」
「……できすぎだよ? 」
陽太くんの部屋も、何回来たのか。
来るたびに近くなって、もう距離はゼロになってる。
口では同じことを言いながら、自分から胸に頬を寄せるからだ。
「陽太くんのこと、だよ」
笑うだけでスルーされて、本当のことを言う。
「俺? 何だろ……」
喜びよりも不安が大きいのか、抱きしめ返す腕の力はほぼない。
「私も、今までの陽太くん見たかったなって……嫉妬」
「え……」
あ、ほっとしてくれたみたい。
ゆっくり言葉を理解するみたいに、段階的に腕が締まってく。
「また、俺のまともな部分、失くすようなこと言って。可愛いけど、本当にそんな必要ないんだよ。輝も言ったじゃない。……俺、輝以外には最低で、たぶんクズだからさ」
それにキュンとしてしまったら、それに喜んでしまったら。
人として終わる気がしてならないのに。今、私。
「……最低……」
「ん……。だって、言ったとおり、今までの俺の行動すべて、輝といる為だったんだもん。勉強も、学校生活も、態度も外見も性格もぜーんぶ」
――輝と、こうできる日の為。