意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!
「ちょっとでも嫌なことしてたら、教えて。じゃなきゃ、俺まじで……っ」
いつもと違う口調がほんの少し混じって、本当の本当に限界なんだなって分かる。
ずっと我慢してくれてたのも、そうなった今ですら、どうにか理性にしがみついてくれてるのも。
「……されてみなきゃ、分からない……」
「……っ」
泣いちゃうんじゃないかって、すごく悪いことしてる気分になる。
泣くのを堪えきれてない小さな陽太くんを、可愛いなって思ってた時と似てる。
「大丈夫だから……そんなことがあったら、今度は嫌いになる前に言う。私だって、陽太くんが嫌なことするかもしれないし、喜ぶようなこともできてないよ」
いいお姉ちゃんが聞いて呆れる。
私はずっと悪い子だ。
愛しくてつい、優しい意地悪がしたくなる。
本心ではあるけど、そうやって宥めてもっと泣きそうになるのを愛でてしまう自分が絶対にいた。
「何言ってるの。俺と普通に話してくれて、付き合ってくれて……触れてもいいって言ってくれて。女神なんだけど」
「…………そういうこと言うならやめる」
嘘。やめないけど。
分不相応すぎることを言われると、甘い言葉よりもずっと居たたまれない。
「なんで。輝は俺の憧れなんだってば。やっとやっと、会えた……」
陽太くんの「なんで」は、いつも返事を求めてない。
赤くなる私に笑って、どんなにむくれても愛情しかない視線を余計に注ぐ。
「この色、やっぱり似合うね」
「……っ、ひょ、うばん、よかった」
髪の色なんて、今本当に見えてる?
唇に耳を挟まれてそう思ったのに、無意識に逆に首を傾けたのを自覚して恥ずかしい。
「よかった。この配合、輝にしかしないけど」
「な、なん……」
私の「なんで」も同じだ。
答えを求めてないというか、分かってるくせにその場しのぎに無意味な言葉を使ってしまう。
「こういうの、輝が好きかなって考えたやつだからやーだ。俺の知識とか経験とかスキルとかね、全部輝の為にあるの」
「……そ、それはダメでは……っ? 」
仕事、適当にします宣言に近い。
ダメに違いないのに疑問符がついたのは、耳を食まれて余裕がないから。
「ダメじゃないよ。好きな子特別扱いするの普通じゃない? ……じゃないなら、俺異常でいい」
――さっき、自分から差し出したよね。
そう非難されたかと思った。
突然の低音に準備できてなかった身体が、ビクビクと小刻みに反応する。
「輝を可愛がれないのが普通なら、頭おかしくても狂っててもいい……」
「陽太く……っん……」
次は首筋だと期待してたくせに。
何のポーズか唇を塞いだ手の甲を、ふわっと包み邪魔だと退かされる。
首なんて急所だ。
そこを晒して、唇や舌が這うのを待ち望む――いつの間にか、それほど信用していたんだ。
「輝が痛いことは、もう絶対にしない。絶対、だよ」
大丈夫。
今、こうできてるってことは、私怖がってない。
「輝……」
ボタンをひとつ外すたび、名前を呼んでは上目遣いに確認されるのに耐えられない。
ようやく再び唇が肌に触れた時には、恐らくお互い息が切れていて、ほぼ同時にくすっと笑った。
「肩、丸くて可愛い。こっちも……」
それって褒め言葉なのかなと問う間もなく、側のソファに着ていたシャツが置かれ。
締めつけが緩み、開け。
より敏感な場所へと、掌も唇も移動してく。
「……きれい……可愛い……すき……」
呼吸を止めてただけ、一気に吐き出される甘さに溺れてしまう。
「柔……痛くない? へいき……? あき……」
「大丈夫だってば……っ」
そんなふうにやわやわされて、痛みなんかあるはずもない。
それよりも、都度確認される羞恥に死にそう。
「すごい、興奮してるからさ。たまりに溜まってるし……心配」
本当のことを冗談ぽく笑う声が耳を擽って、私の方こそ優しさに理性がとろけてしまった。