意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!





「……いじわる……」


言えない、何も。
私、これだけでも完全に溺れてる。
過去にあれほど拘ってたのに、きっと今、信じられないくらい情けない顔してる。


「輝の好きにしたいんだけどな。……なら、さ」


スカートを少したくし上げて、太腿に、指。


「……嫌? ……じゃない? 」


一回目は、ふるふると弱々しく。
二回目の疑問文には、力いっぱい、何度も。


「恥ずかしがることないって言ったのに。……じゃ、こうする? 」


頷いたのを、恥ずかしがらないなんてむり。


「ん……可愛い。俺が急いでたら言ってね。もし、大丈夫だったら……」


――このまま、キスしてて。力、抜いて。大丈夫なところまで、委せて……。


キス、続けたら。
この先ずっと、「大丈夫なところ」になってしまう。

ボーダーラインを探るみたいに、ゆっくり上っていったスカートの裾が上がりきって、期待と緊張と戸惑いが一緒くたになってどうしていいか分からずに、すんと鼻が鳴る。


「輝……」


ひとまず、最後の確認になるかもしれない。
恐らく、呼ばれるよりも頷いたのが先だったと思う。
下着のウエストの辺りに緩く掛けられた指先が、僅かにくんっと引っ張った時。

――ピンポーン。

チャイムが鳴っただけで悪いことしてたみたいにビクッとしたのは、昔のことを思い出したから。


「……無視しとこ」

『……あきちゃん、いっちゃやだ……』


陽太くんのお母さんが帰ってきて、何となく気まずくて帰ろうする私をそう引き留めたよね。
今の陽太くんが繋ぎ留めてるのは、私の裾でも袖でもないけど、だからこそそわそわする。


「ほら……」

「~~っ」


鳴り止まないチャイムに、陽太くんは壁のインターホンを恨めしそうに睨んで。


「……輝の気が変わったらやだからやだ」

「…………さっさと出た方が、落ち着けるっていうか。大丈夫だから出てほしい……」


じーっと見つめる瞳に根負けして、大丈夫って確約してみせたけど。


「秒で切るから、そのままでいてくれる……? 」

「……わ、かった」


それでやっと安心したのか、指が諦めたようにするっと外れたと思いきや。


「……はい」

「……っ、な、ひっな……」


器用にインターホンに向かって話しながら、また掌が上って私の胸を掬う。


「しーっ。声、拾っちゃうよ」

「な、なら、やめ……」

「……ない。輝の熱が冷めないようにするの」


(…………全然、安心していただけない)


微妙に身体を反らされて、がっくりと項垂れることもできない。
冷めるどころか、上がって倒れそうになった瞬間、超急降下させる声が部屋に響いた。


『……陽太? 』

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