意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!
「お久しぶりです」も「ごめんなさい」も。
どちらを先に言っても、おかしい気がして唇が動いてくれない。
「輝ちゃん……」
「あ……」
よかった。
私の名前を呼んでくれたおばさんは、怒っているようにも軽蔑しているようにも見えない。
すごくほっとしたけど、それだと疑問が残るというより、どんどん生まれてしまう。
「……俺、今人生で一番幸せ。輝がいてくれる。……二度と、誰にも奪わせない」
どうして、彼はそこまでしないといけなかったのかな。
確かに、陽太くんの愛情は私が言うのもなんだけど、普通ではないかもしれない。
でも、あの事件を知らないはずのご両親が、彼にそうまでさせる原因を作ったのがよくわからなかった。
「ひな……でも、陽太は」
「……俺は? なに? いいよ、その続き言って」
息子を変えてしまったと、恨まれてるのかと思った。
でも、こうして実際に会ってみると、そんなふうにも思えなくて。
それなら、なぜ、陽太くんの生活から一切「あきら」を失くしてしまったんだろう。
「自分で言おうか。うーん、“異常だから”? “狂ってるから”? “何か、犯罪をやらかすんじゃないかって怖いから”……か。どれか合ってるでしょ。それか、全部」
「陽太くん……」
自分のこと、そんなふうに言うのは嫌だ。
私の前だけで、冗談ぽくや睦言のように囁くのとは違う。
もしもそれが事実で、彼自身同じ意味で言っているのなら尚更。
「ん……ごめん。でも、俺、今まで生きてたのが不思議なくらい、辛かったんだ。輝がいる。会えないけど、同じ世界に輝はいてくれるんだって。それだけが、俺の存在理由だったから。……や、なんだ。また、輝がいないのは嫌だ……」
「……いるって言ったよ? 今、その……彼女を見たって、何も変わらない」
彼女の存在はショックだ。
陽太くんに騙されてなお、彼を好きなんだってことも。
彼女は、ご両親に受け入れられてたんだってことも。
「ありがと。……彼女じゃないよ。俺の彼女は、輝だけ。俺も言ったよね。最低でクズだって。……もう、証明しちゃった」
「先に部屋行っといて」って、頭をぽんっとしたのか合図。
おばさんを追い返すのを見るのは悲しくて、気になりながらも背中を向けると。
「……っ、輝ちゃん」
(え……? )
おばさんが最後に呼んだのは、どうしてか――私。
不思議に思う前に、催促するように耳元に口づけられ。
渋々、玄関を後にした。