意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!
・・・
昔、その昔は仲がよかった。
二つしか違わないけど、あの頃の陽太くんはすごく小柄で。
気も弱かったから、「ひなのことは私が守るんだ」って、ただ近所に住んでいるというだけでお姉ちゃん気取りを楽しんでいたし、大好きだった。
『あきちゃん』
って、いつもくっついてきて。
少しでも側を離れると、秒で泣いちゃうのが可愛かった。
「もう行かないよ」って言った後、涙いっぱいの目をして、信用ならないというようにしっかりと服の裾を握りしめてたのも。
それから少し、年月を経て。
小学生になって、どれくらいだっただろう。
いつからか、口調や態度も荒っぽくなっていった。
『お姉ちゃんじゃなくて、お兄ちゃんだろ。あきら兄』
年上ぶられるのが嫌だったのか、よくそう言われたっけ。
それだけなら、まだ成長という意味ではおかしなことじゃないかもしれない。
髪を引っ張られれば痛かったし、「男だろ」って鞄に虫を入れられたりして悲しかったとしても。
でも、ある日――それは決行された。
夏だったか冬だったか、着ていた服は何だったか。そんなことすら思い出せない。
ただそれはうちの両親が二人とも遅くなる日で、
『おばさん、いないの? 』
珍しく普通に話しかけられたのに驚愕と歓喜が入り交じって広がり、多少あったかもしれない疑惑が食い殺された。
『今日は、二人とも遅くなるって』
聞かれてもないことを正直に教えてしまった後悔だけ、今もありありと思い出せる。
当たり前だ。
大人になった今も、何度後悔したか分からないんだから。
『ひな……っ、何、して』
ベッドに座って、一緒に漫画読むんじゃなかったの。
そんな、友達で幼馴染みっぽいこと、昔みたいにできるんだって嬉しかったのに。
『離して……! 重いよ……っ』
訴えれば訴えるほど、覆い被さった体重が更に小さな体を圧迫する。
『な……』
膨らんできたのが恥ずかしい。
そんなことを思い始めた胸。
そうやって弄ばれて、先を摘ままれるようにはまだできておらず、痛みしかなかった。
『年上なのに知らないの? 』
わたし、まだしらない。
これが何なのか、何でそんなことをするのか。
知識がないのは恐怖だ。
「何が何だか分からない」という混乱は、恐怖をどんどん増幅する。
『やめ……っ、んん……っ』
舌が使われるのも同じくキスと呼ぶだなんて、後から知った。
知ってからも、絶対信じたくなかった。
『あきら、本当に女だったんだ』
意味が分からない。
だったら、何だっていうのか。
男だとか女だとか、今されていることにどう関係してるのか。
頭の中がぐちゃぐちゃなのは、望んでないのに無理に未知の世界に連れ込まれる恐ろしさと――一番分からないはずの「どうして、陽太くんがこんなことするのか」を考えたくなかったからなのかもしれない。