意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!
肌に落とされるキスの音が、これほど恥ずかしいものなんだって、初めて思った。
「陽太くん……」
「……うん……呼んで。輝の声で呼ばれるだけで、俺……」
恥ずかしさを紛らす為に、声を出したのに。
そう言われると、別の羞恥が生まれてしまう。
「真っ赤なの可愛い……でも、恥ずかしいがるの勿体ないくらい、よくなってほしいから……」
名前、もう呼べなかった。
言葉らしい言葉は出てこないし、単語を作れるほどの余裕もない。
嬌声という他に、何とも表現できない音が、本当に私からこんなに出てるのかな。
陽太くんの指が外側からなかへと進むたび、音という音が私を馬鹿にする。
「へいき……? 」
生理的に涙は出るし、唇も間抜けに隙間ができる。
そんな顔をすぐ上からじっと見下ろされて、ぞくぞくするとか。
「よかった。大丈夫……怖くないよ。俺は、もう怖いことなんかしないから。安心して……そのまま、ね」
(……そのまま)
――堕ちてしまう。
一度達してしまえば終わりなんじゃないかって、どれだけ喘いでもまだ抗おうとする。
(……おわり……)
……って?
これは、はじまり、のはず。
「もう。なんで、我慢しちゃうかな。いいのに、いって」
「そ、んなこといわれても」
ぎゅって、してしまう。
いかせよういかせようとしてる、当の本人に抱きついてくっついて、いやいやする矛盾。
それこそ、普通かもしれない。
でも、私たち特有のパラドックスは私の頭の中に確かにあって、陽太くんが与え続ける脳内麻薬に融かされていく。
「無理しないで、イッた方がいいよ? そんなふうに可愛い顔で必死で我慢されたら、意地悪しちゃいたくなるから」
「……や、やだ」
陽太くんの意地悪は、きっと優しくて甘くて甘すぎて――執拗だと簡単に予測できる。
普通の精神状態じゃ自分を軽蔑しそうなくらい乱れきって、何も考えられない頭の今でも。
「ん? やだ? やなら、素直にイッて。ね、……可愛くイッてるの見たい」
「……む、ちゃ、言わないで……っ」
可愛くいけとか無理。
いつもは意味不明に可愛いを言い続けるくせに、この酷い状態で可愛くなれとかどういうこと。
「言うと思った。思ったとおりの反応、可愛い……でも、苛めたくなる……」
私が素直になるわけなかった。
私の性格を知り尽くしたうえでの意地悪は、本当に質が悪い。
「意地悪……っ」
「だね。ごめん」
あっさり謝られて、変だと思った瞬間。
「……あ……っ……? 」
ほんの一瞬気が緩んだなかを、いっそう。
「ごめんね。可愛くて可愛くて、俺の方が我慢できなかった」
おわり、じゃない。
ごめんね
可愛い
その間も延々蠢いていて、ビクビク痙攣するのをまた可愛い可愛いって、かわいがられる。
「……ん……だめ、輝。身体、引かないで。好き……可愛い……」
めちゃくちゃだ。
もう、彼が何を可愛いと思うのか、ただ単語の羅列だけで、言語として成り立ってない。
(……最初からだ)
はじまりなのか、終わりなのか、わけ分からなくなってた。