意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!







・・・




「へーえ、年下キラーね」


髪の毛を乾かしてくれながら、面白がってる……ように、陽太くんが言った。


「友美が言ってるだけだよ」

「でも、事実でしょ。で、輝、それ俺の呪いだと思ってたんだ」


こうやって陽太くんの部屋で過ごすのが日常になって、私の部屋に彼が来ることも珍しくなくなって。


「だ、だって」

「怒ってないよ。俺がそんなことできるわけないし。でも、それ変じゃない? 」


つまり、いつの間にか、二人でいない日の方が非日常になってしまった。


「俺が呪う……っていうか、念じるなら男除けだもん。引き寄せてどうすんの。困る」


過去の話になると、やっぱりまだ慎重になるから。
笑っていいよって、ぱっと振り向くと胸に頬を寄せた。


「こら、危な。もうちょっとだから、じっとしてて」


あ。やっと笑った。
そうやって辛そうな顔をするのに、陽太くんは私の昔を知りたがる。


「……それで、最近はあんまり付き合ってなかったんだ」

「単に、縁がなかったんだと思う」


そもそも、少なくとも陽太くんよりはモテないし、自分からいけるタイプでもない。


「……ごめんね」

「謝らなくていいってば……」

「ううん。だって俺……それ、喜んじゃうから。輝に誰もいなかったこと」


別に、普通――そう、それは当たり前の感情じゃないかな。
好きな人に相手がいないって分かって、ほっとするのは。


「ほら。続き」


たわんだドライヤーのコードと、肩に置かれただけの陽太くんの腕。
緩い円の中にいると、何だかすごく寂しくなる。

会話のせいだ。


「もう大丈夫……」


他の人の話を、好きな人の側でするから。


「ダメでしょ。ちゃんと乾かさなきゃ……」


ドライヤー、いらない。
きっと、すぐに乾く――その、手櫛だけで。


「仕方ないな、輝は」

「うん」


仕方ないというか、どうしようもないの。
今、たぶん、私の方が陽太くんを追いかけて、しがみついちゃってる。


「言ってみたかっただけだったのに。……何かあった? また、怖い思いした? 」


そうだよね。
私が素直に甘えたのって、不安になった時ばっかりだ。
陽太くんはそういうつもりで言ったんじゃないし、何より本当のこと。
でも、改めて自分のしてることを認識して、また自分が嫌になる。


「何もなかったら、だめ……? 」

「え……」


本当に本当にずるいよね。
いくら、それでもいいって、利用されてもいいなんて言われたって。
それが許された時があったとしても、もうとっくにその段階は終わってるのに。


「何もなくても、一緒にいてほしい……」


付き合ってるんだ。
彼氏なんだ。
何があったとかなかったとか、不安で寂しいとかだけじゃなくて。
何もなくたって、こんなに必要としてるってこと、知ってほしい。

ねえ、一緒がいいの。




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