意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!
結局、それから三日休んだ。
その当日は看病モードだった陽太くんも、二日目の昼を過ぎてくると、いつもの溺愛モードにだんだん移行してきて。夜には――……。
『輝……』
陽太くんの声は穏やかで優しいのに、耳の奥に入ってしまうと強烈に身体の芯を揺さぶってくる。おまけに。
『こっち見て。俺の目、見て……』
この数日、そんな呪文まで追加されてしまった。
ぼやけてるのか、覚醒しすぎているのか分からない状態で一点を見つめ続けるのは難しい。
だから、意識が遠退きそうになるたび、『俺のこと見て』が繰り返された。
・・・
「輝? 」
いけない。
久しぶりというには早すぎるけど、仕事が非日常に思えるほど、陽太くんとの生活にどっぷり浸かっていた頭と身体が「普通」についていけてない。
「まだ本調子じゃないみたいだね。大丈夫? 」
「あ、うん」
「犯人捕まって、ほっとしたのかもね。彼氏がつきっきりでしょ。治ってからも? 」
「ん……」
友美のからかいにも上手く返せない。
廊下でばったり会って、休憩時間まで待てずにいろいろ話したいことがあった気がするのに何も出てこなかった。
「輝? 何かあった……? 」
「……ん……ううん。でも」
「……お疲れさまです」
(……でも、何だっけ? )
一生懸命思い出そうとするのを、ちょうど別室から出てきた池田さんに呼び止められた。
「お疲れさまです……」
またタイミング悪い。
警戒して、一歩前に出てくれる友美の位置まで私も踏み出した。
「すみません、業務中に。……よければ……いえ。お話ししたいことがあるので、少しお時間いただけないでしょうか」
「彼女は今日、具合が……」
「お二人ともです」
噛み合っていない会話。
遮ってぴしゃりと返したのは、社交辞令や当たり障りない断りは不要と言いたいんだろう。
こんなところで私的な話、しかも、ほぼ強要――何にしても、余程言っておきたい話。
「……分かりました。でも、友美は……」
「馬鹿、行くわよ」
噛みつくように言って、私の手首を握る彼女が嬉しくて、100%悪い話が始まると分かっていてもふと笑ってしまった。
わざわざエレベータで別のフロアに移動して、会議室のプレートを「使用中」にする。
これが二人きりなら、あらぬ疑いをかけられそうだ――そんな、もうどうでもいいと思えることをぼんやり思った。
「……信じてくださいとしか、言いようがありませんし、聞いてどうするのも伊坂さんの自由ですが」
時間はない。
誰かに見られても聞かれても、騒ぎになる。
小声で単刀直入に切り出されたのを、私は果たして驚いたのかな。
――彼、異常なのでは。
「初めて……先日の結婚式でお会いして、不思議に思ってたんです。私が伊坂さんに好意があるのが伝わったから……いい気がしないのは当たり前だと。最初はそう思ってたんですが……今思えば、前にどこかで見かけたことがある。実は、私も」
――ここしばらく、視線を感じていたんです。