意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!


陽太くんが、池田さんのストーカー?


(……そんな馬鹿な)


「いえ、そうではなく。恐らく、私を伊坂さんに近づけない為に……排除する為に、行動パターンを調べていたのではないでしょうか」

「……そんな……! 」


陽太くんは確かに嫉妬深い――というより、経験上、極度の心配性なんだと思う。
でも、それにしたって、他人まで巻き込んで――……。


『他なんて、輝と付き合えた時の練習』

『輝以外、ただの生物』


「推測ですが、以前、怖い目に遭ったと言われてましたよね。その変質者の正体は、私だと言われませんでしたか」

「……っ、彼はそんなこと言わないです。私が勝手に、勘違いを……」


誤解した、だけ。
でも、でも……。


『コツコツ鳴る靴って、ちょうどあんな感じなのかなって』


(……違う。たまたま、偶然)


陽太くんは、同調してくれた、


「……誘導、されたんですね」

「……ちがい、ます。酷い誤解で申し訳なかったですけど。あんなことがあって、過敏になってたところに声を掛けられたから。それだけです。それに、犯人だって捕まったので、もう……」

「言いたくないのですが、それは……」


陽太くんが関係してるなんてこと、ある?
あの時美容室にいた彼が、犯人じゃないことだけは確かなんだから。
誰かに依頼するって言ったって、そんなの引き受ける人がどこにいるの。
そんな人いるわけない。


『……なに。架けてくんなって』


――脅迫でもされない限り。



・・・



「おかえり」


帰ってきたのがこの場所で、本当によかったのかな。


「ただいま」


そう思わなかったわけじゃない。
会社からの道のりで、何度も引き返そうか迷った。


「大丈夫? ぶり返したりしなかった? 」

「ずる休みなのに? 」


でも――……。


「ずる休みのが、ぐったりだったりして。……って、俺のせいだね」


私、まだくっついてる。
出迎えてくれた陽太くんに自分から近寄って、くっついて、おでこを胸に預けて。


「うん」

「だよね。ごめん」


少し離れた、彼の裾を引き留めたりしてる。


「でも、私が選んだの」


池田さんに言われたことを、いくら否定したって、消えてくれないどころかいつまでも渦巻いている。
それはつまり、否定するのは口だけで、心の中では肯定してるから。

――あるのかも、って。

そのうえで、私は選んでる。
陽太くんのところに帰ってきて、抱きしめられて。


「また、そんな可愛いこと言って。俺のせいだけど……輝だって、煽ってるんだからね。それに、俺がそれで止まらなくなるって知ってるんでしょ」


言葉とキス。
優しく撫でられながら、後から後から止まらないように続く、甘やかされるのを待機するのを。


「悪いこ」


そう。
どれだけ忠告されたって、私はもう決めてるんだ。
何も知らないふり、気づかないふりしてたのを、今やっと第三者から正面で言われて戸惑っただけ。


「……うん……」


――悪いこだ。すごく。





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