意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!
「……ね、陽太くん」
「ん? 」
悪いこだから。
ここから、抜け出そうなんて思わないから。
「大好き」
だから。
「もう大丈夫だよ……? 」
何もしなくたって。
あんなことしなくたって、もう離れたりしない。
「……輝」
全部知ってるんだって、言ったら。
どんな反応が返ってくるのか怖くて、名前を呼ばれてビクッとしてしまう。
「輝は、何も心配しなくていいんだよ。輝に悪いことは、何も起こらないから」
知ってる。
私はひたすら甘くてふわふわした世界で、大事に大事に愛されるんだ。
「……陽太くんに、そんなことしてほしくないの」
あと何度、この台詞を言うことになるんだろ。
子供の頃、理解してもらえたと思ったのに。
(お願い)
あの時みたいに、「じゃあ、しない」って言って。
「しないよ。いくら悪人とは言え、もう脅して悪いことさせたりしない」
ほっと息を吐いて、視線を落とす。
懇願する時にはしっかり見上げられたのに、約束してもらえてから、陽太くんを見ていられなくなった。
「……怒らないの? 別れるって……どうして、逃げないの」
――好きだから。大好きになっちゃったから。
「……変わらないね、本当に。あの時俺は、そんな輝に一目惚れしたのに」
「一目惚れ」の定義は、私たちに当てはまらないと思った。
でも、恐る恐る見上げて陽太くんの目を見たら、ああ、そうなのかもしれない。
たぶん、あの時初めて、私は陽太くんの目に映ったんだ。
「そこから始まっちゃった、って知ってて。何十年経っても同じことしてる俺に、またそうやって好きって言ってくれるの」
「……だって」
「だって……? 」
同情?
そんなはずない。だって。
「好きな人と一緒にいたいのは、当たり前だよ」
どこに、同情の余地があるの。
「……輝」
「だから、しないで。陽太くんの側にいるのを、迷わせたりしないで」
それでも、側にいたいのは。
好きだからって以外に、理由なんてない。
ただ、ちょっとだけ予想外だったのは、そこまで私は陽太くんの愛情に堕ちてしまってたんだってこと。
「……ありがと。怖い思いさせたのに、好きなままでいてくれて。後悔させないよ。輝のことは、大切に可愛がって幸せにする」
(それはね、心配してないよ)
「他人を利用したのもごめん。それも気をつける」
「……しない、は? 」
さっきはそう言ったのに。
もう、そんな曖昧な返事に戻ってる。
「うん。しない」
(……そっちは、やっぱり)
――ものすごく、信用できない。