一途なイケメンくんととろけるくらいに甘いキスを



「俺、親が居ないんだよね。ずっとここで育った」



琥珀くんが言うには、物心がついた頃にはもうここに居て、中学生までここで暮らし、高校に入ってから施設を出て、高校の近くにあるアパートで一人暮らしをしているらしい。


そんなこと、何も知らなかった。


琥珀くんがそんな生活をしていたなんて。



「そんな悲しそうな顔すんなよ。別にここで育ったこと嫌だと思ってないし、むしろ感謝してる」



見た目からはあまり想像できない言葉が次々と琥珀くんの口から出てくる。


琥珀くんはその感謝の気持ちを伝えるために、長期休暇の時は手伝いに顔を出していたらしい。


やっぱり琥珀くんはとっても優しい男の子だ。



「あっ、琥珀くんだーっ!」



施設の中から琥珀くんを呼ぶ声が聞こえる。


琥珀くんを呼んだのは、まだ幼稚園に通っているくらいの小さな男の子。


それを皮切りに、わらわらと窓際に人が集まってくる。



「よぉ」



そう言って琥珀くんは右手を上げて合図を送っていた。


それを見てまたキャッキャと騒ぎ始める施設の子どもたち。


それを見るだけで、琥珀くんがみんなからすごく好かれているのがわかった。




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