一途なイケメンくんととろけるくらいに甘いキスを



「行きたいの?」



思わず足を止めて見てしまったから、琥珀くんにそう問われた。


行きたいか行きたくないかと言われれば、行きたい。


お祭りが楽しいってことは知っている。


私も小さい頃はお母さんとお父さんに連れられて毎年行っていたから。


それがいつしか無くなった。


あの事件以来、夏祭りは怖いものになってしまったから。



「でも……」



行きたいけど、行きたくない。


またあの日のことがフラッシュバックしてしまいそうで、怖い。



「この日、予定空けとけよ。絶対俺が守ってやるから心配すんな。楽しいことだけ考えてればいいじゃん?」



ズボンのポケットに両手を突っ込んだまま、私とは目を合わさない琥珀くん。


真っ赤な夕陽のせいかもしれないけれど、ちょっとだけ耳が赤く見える。



「一緒に、行ってくれるの?」



恐る恐るそう聞くと、「あぁ」と肯定の返事が帰ってきた。


どうしよう、嬉しい。


さっきまで怖かったはずなのに。


琥珀くんと行けるお祭りは楽しみだなんて。




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