一途なイケメンくんととろけるくらいに甘いキスを
まさかまた天地くんに声をかけられるなんて思っていなかったから、心の準備ができていない。
体がビクンと震える。
「数学?」
机を挟んだ向こう側から、私の手元を覗いてそう言った。
私の目の前には、数学の問題集とノートが広げられている。
無視をするわけにはいかず、だからと言って咄嗟に声を出すこともできず、ただコクンと頷いた。
「どこ、わかんないの」
ぶっきらぼうな声がさっきよりも低い位置から聞こえる。
天地くんは、空いていた私の目の前の席に座っていた。
「え?」
「だから、どこ?」
パチパチとゆっくり瞬きをする。
だって、今何が起きているのかわからない。
頭の整理が追いつかない。
「困ってんなら教える」
「え、教えてくれるの……?あ、でも……」
授業中、ほぼ毎回と言っていいほど居眠りをしている天地くんが?
いやいや、人を見た目で判断しちゃいけないんだと気持ちを改めたばかりで……
ううん、それ以前に長時間異性と話すことは、まだ私の心と体が許していない。