零度の華 Ⅲ
伍
終わりと始まり
ウゥー、ウゥー
タッタッタッ、カシャカシャ
「ハァッ、ハァッ、ハァッ」
鳴り止まないサイレン
夥しい人の足音と、物と物とが擦れ合う音
走る吐息
いつも騒がしく鳴く虫たちも驚いているのか、全くと言っていいほど声を聴かせない
異常な光景に住民達も不安を隠しきれずに、安心して眠りにつけないことだろう
「あっちへ逃げたぞ!!」
追われる者と追う者がそれぞれの目的を果たすために走り回る
夜だというのに太陽がまとわりついているように汗が止まらない
一人に対して30かそれ以上と思われる警官に、5台ほどのパトカーを相手に鬼ごっこを20分も続けている
そろそろあたしの体力も限界だ
あたしは狭い路地を進みに進んで、警官の焦る声を聞きながらも足音が減っていくのを確認する
どうやら先回りをするようだ
< 1 / 60 >