零度の華 Ⅲ
「どこに行く気だ?」
『上だ。寝る』
「俺はここに居てもいいなんて言った覚えはねーぞ」
本当に何も変わってないな、あたしを嫌うあたりは
『もう亜紀にここで待ち合わせをしている。今更変更するつもりはない』
「警察に突き出してもいいんだぞ?」
『そんなことしたら、お前もムショ行きだぞ?』
自分からムショに入りに行くようなことはしないだろ
というか、そんなことはして欲しくないな
折角、使えると思って残しておいた数少ない道具なのだから
あたしは何も言わない緑に背を向けて、階段を上がり高級そうなソファーに横になる
店には客は来ないから緑があたしを殺そうとしない限り、安心して眠れる
5年前はあたしを殺すだけの力がなかったが、今は緑の方が上だろうな
5年もの長い間、体を動かしてないのだから体が鈍りきっているため、今襲われたら死ぬのは間違いない
あたしはゆっくりと目を閉じた
それにしても、今日は疲れたな
明日から忙しくなるだろうな………
あたしはそのまま眠りについた