零度の華 Ⅲ



ソファーから立ち上がろうとした時、ドアが開いた


現れたのは緑だ

緑はあたしの向かい側に座ると口を開く



「お前が今まで生きてこられた理由を聞かせろ」


『何で命令されなくてはいけない』


「昨日、約束しただろうが」



落ち着く暇も与えてはくれないってか

話すのを先延ばしするのは得策ではないな



『………分かったよ。今まであたしがどうしていたのか話してやる』


あたしは5年前、警察に捕まってから今までの話を簡潔に説明した



「_____警察がそんなバカみたいなことを許すとはな」


『何を考えてんだろうな』


「それはお前も一緒だ」




あたしの考えていることなんてすぐにでも分かることだろ?


あの時、あたしは死にたくなかった

"まだ、ここでは死ねない"

そう思った


今までのあたしだったら簡単に死ぬことはないと、自信にあふれていた

自分が死ぬことなんて絶対にないと


だからこそなのか、死を間近に感じた時に強く死にたくないと思った



今思えば、あたしは死に恐怖をしていなかったわけではなく、生に執着をしていたのだと

生きている証明を残したかったのだと……



そう、思う


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