零度の華 Ⅲ


今思えば、あたし餓鬼だったなと思っていると、裏口のドアが開かれる

そこに立っていたのは亜紀だった

亜紀はあたしの姿を確認すると笑みを見せる


「お変わりないようで驚きました。よくご無事で」


あたしは亜紀を一瞥して、何度目かの言葉を言う


『あたしは一度、死んでいる』


「死んでいる?まさか、生まれ変わったとでも言うのですか?傍若無人、暴虐非道の貴女が、ですか?」


『生まれ変わった、か。それを判断するのはお前だ』




亜紀は帰ってきたあたしに何を期待している?

再びあの悪夢のような世界を求めているつもりか?


あたしがいなくても亜紀は1人で殺しをしていた

あたしがいないことで自分のやりたいように殺すことができ、何不自由なく、縛られることなく殺しができていたのに、あたしが帰ってきたことで、また縛られた生活になることに不快感を抱かないのだろうか……



亜紀はあたしを通して、何を望んでいる?


殺しだけできたらそれで十分の亜紀が何を考えている?



……今、そのことを考えても分かりはしない




あたしはあたしのやるべきことをするのみ

そのために生き延びて、脱走してまでこの世界に戻ってきたのだから……

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