『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
大通りまで出てタクシーを拾い、私は自宅に向かった。
正直、このまま家に帰ってしまおうと思っていた。
でも、このままじゃパパは納得しないだろうな。

「あのぉ、この通りをまっすぐに行ってください。県立病院の救急外来へお願いします」

家に着く直前で気が変わった。
パパから握らされた五千円札を見つめながら病院へ向かう決心をした。

さっきパパのアパートで見たおじさんたちはきっと借金の取り立てだと思う。
パパがお金に苦労しているのは知っていたし、じゃなければ娘の私にお金を貸してほしいなんて言うはずないのもわかっている。
だから、パパにとってこの五千円は大切なお金のはず。それを私に渡して病院へ行けと言ってくれた気持ちを考えると、このまま家に帰る気にはならなかった。
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