『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
病院を出るころには、6人ほどの集団になっていた。
それもみんな野郎ばかりで、若手のスタッフが多いせいかやたらとやかましい。

「いつもの店でいいだろ?」
言い出しっぺの先輩が先頭を歩き、
「「はい」」
集団が後に続く。

先生たちは皆病院の近くに行きつけがあって、大体行く店も決まっている。
もちろん好みも様々で、焼き鳥屋が好きな人や、居酒屋が好きな人。オシャレなビストロでワインばかり飲む人もいれば、高そうなクラブのVIPルームを自分のもののように使っている先生もいる。
ただ一つ共通しているのはあまり人に会わない小さな店や個室のある店にこだわっていること。
医者って職業は自分でも意識していないうちに顔を覚えられることが多いから、人の多いところでは気が抜けないのがその理由だ。

今日誘ってくれた先輩医師は実家が開業医のお坊ちゃん。
お金に苦労はしていないから、地元でも評判のイタリアンの店を行きつけにしている。
まあ、そこなら食事も出てくるから悪くはない。きっと先輩の奢りだろうし。
飯を食って、少しだけ付き合って抜け出そう。
これだけの人数がいれば、俺一人いなくたって気が付かないだろうから。
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