『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
「何か手助けできることがあれば」

ほとんど初対面人間に『手助けできることがあれば』なんて言ってしまえることに驚いたけれど、せめてもの救いは彼が本物のお医者様で名前もわかっていること。訳の分からない出会い系サイトで知り合ったおじさんとは比べ物にならないくらい安全だと思える。

「お金が、必要なんです」

「え?」
一瞬、表情が固まった後、
「いくら?」
真っすぐに目を見て聞かれた。

「さ、30万」
さすがに声が震える。

「ずいぶん高額だね」
「ええ」
だからこそ困っている。

30万円なんて普通の高校生に用意できる金額ではないし、何かしなければ手に入るお金でもない。
じゃなければ、

「貸そうか?」
「はあ?」

からわれているのか、本気で私を買おうとしているのか、本心はわからない。
でも、本当にお金をくれるのなら、杉原先生なら、いいかもしれないと思う自分がいる。

「援交よりましだろ?」

うぅー。痛いところをついてくる。
だから医者って人種は嫌いなのよ。

「どうする?」
挑発的な口調。

「・・・いいですよ」
今の私にはほかに選択肢がない。

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