『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
本当にシンプルで物の少ない部屋。
その分散らかった印象はなくて、どちらかと言うと生活感がない。
敬さんが言う通り、ここには本当に寝に帰るだけなのかもしれない。そんな思いで部屋の中を見回していた。

こんな時って、普通はどうするべきなんだろう。
シャワーって浴びるのよね?

「あれ、何してるの?早く上着と靴下を脱いで」
「え、あ、ああ」

普段着に着替えて一旦リビングに戻ったものの、敬さんはまたキッチンの方へ向かって行った。

そうよね。
そのために来たんだものね。
今更恥ずかしがっても仕方ない。
私は覚悟を決めて着ていた服を脱ぎ始めた。

上着を脱いで、ブラウスのボタンを外しスカートのファスナーも降ろす。
普通こんなに明るい部屋で、自分で脱ぐものなのかな。それとも敬さんの趣味かしら。
ネットや雑誌の知識しかない私には何をどうするのが正解かなんて全く分からず淡々と服を脱いでいった。
その時、

「お、おまえっ」
聞こえてきた叫び声。

キャミソールとショーツ姿で固まていた私は赤面したまま振り向いた。

「ば、馬鹿野郎」
床に落ちた服を拾い乱暴に私の肩へ掛ける敬さん。

「だ、だって・・・」
敬さんの大声で緊張の糸が切れた私は、その場に泣き崩れた。
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