『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
「お父さんのため?」
「うん」

離れて暮らすパパに借金があって、借金取りに追われていて、至急30万円のお金が必要になったこと。
ママにも、ママの旦那さんであるおじさんにも話したくないこと。
それでもパパを見捨てることはできなくて、30万円を自分で用意しようとしていること。
他人だからかもしれないけれど、ママと向かい合えばすぐに喧嘩になるような内容を冷静に話すことができた。

「でももし、これを渡して『もう30万円用意して』って言われたらどうする気?」
「それは・・・」

確かに、その可能性は大いにある。きっと借金そのものは30万円よりももっと大きな金額だろうし。
そうなれば諦めるしかないんだろう。高校生の私にこれ以上のお金を用意することはできないんだから。

「いいよ。これで真理愛の気が済むなら、使って」
敬さんは封筒に入ったお金を私の両手に握らせてくれた。

「敬さん」

でも、いざ現金を手にしてみるとためらう気持ちの方が強くなる。
たとえお金に困っていないからと言っても、これは敬さんが働いて得たお金。
本当に私なんかが使っていい物だろうか・・・
イヤ、ダメだ。
敬さんから借りたお金でパパを助けてもきっとパパは喜んでくれないし、むしろ悲しい思いをするだろう。

「ごめんなさい。やっぱり・・・やめます」
私はテーブルに手をついて、頭を下げた。

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