『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
父さんと母さんが駆け落ちをして一緒になったことは知っていた。
そのせいで母さんは苦労して、早死にしたんだろうとも思っている。
俺自身、母さんの縁者に良い感情ばかりがある訳ではないし、当然おじさんからの誘いなんて断ってしうつもりでいた。
ただ・・・
名刺にかかれていた病院名は俺が行きたいと思っている病院の一つだった。
東京から少し離れた関東の公立病院。
田舎の病院であることに間違いはないけれど、地方病院ゆえに患者数も多いし扱う症例も豊富でドクターヘリの拠点病院にもなっているところ。救命医としてのキャリアを積むには魅力的だった。

それから会うたびに何度も誘ってくれるおじさんに、とうとう根負けした俺が折れてしまった。

「わかりました。お世話になります。でも、副院長と俺の関係は内密にお願いします」
そこは譲らないぞと条件を付けた。

「わかったよ」
おじさんは確かにそう言ったはずなのに。
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