『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
朝のひと騒動
side 真理愛

敬さんのマンションを出て、私は大通りを目指した。
今のところ足に痛みはないから少しくらいなら歩いても問題ないように思う。
できれば30分ほど歩いて駅まで行こう。それまでに行き先を決めてよう。
そんなことを考えながら、私は朝の街を歩いた。

うーん、気持ちいい。
土曜日だけあって人も少ないし、何よりも空気が清々しい。
こんな気分になれるなら、たまに街を歩くのも悪くないな。

チリン、チリン。
後ろから自転車が来て、咄嗟的に避ける。

「痛っ」
急激な横移動がいけなかったのか、捻挫した右足に痛みが走った。

うぅーん、痛たた。
せっかく湿布してもらったのに、またひねったみたい。
困ったな。このまま駅まで歩くのは無理そう。
仕方ない、タクシーに乗ろう。


ちょうど空車になったタクシーがすぐそばにいて、私は飛び乗った。

「この道をまっすぐに行ってください」
とりあえず方向だけ指示して、窓の外を見る。

もし家に帰るなら、逆方向だった。
真っすぐ行った先にあるのはパパのアパート。
敬さんのマンションを出る時には行き先に迷っていたけれど、やはりパパの所に向かうことにした。
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