『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
「だから、金を出せよ。そうすればこの娘には何もしない」
敬さんに向かって、絶対に信用できないようなことを言うチンピラ。

今ここでお金を出せば、この後何度も要求してくるに違いない。
そんなことは私にでも想像がつく。

「金は出さない。借金があるなら本人に請求するんだな」
そう言って、敬さんは私の腕を引いた。

「待てよ」
当然のようにチンピラは敬さんの肩をつかんで止めに入った。

困った。
このままじゃもめる。
この事態をどう収拾させようかと考えていた時、

バンッ。
ドンッ。
鋭い音がして、
「ウッ」「ウウッ」
気が付くと、チンピラとスーツの男性が廊下に座っていた。

一体、何が起きたんだろう。
理解できない私はキョロキョロとあたりを見回す。

この状況で立っているのは私と敬さんだけ。
借金取りの二人とパパは廊下に座り込んでいる。

え、えっと・・・

パパはチンピラに突き飛ばされたはずで、この二人は・・・・

「大丈夫?ケガはない?」
心配そうに聞く敬さん。
「う、うん」

どうやら敬さんが二人をやっつけてくれたらしい。でも、どうやって?

「こう見えて十代の頃にはやんちゃしていたんだ。ケンカだって数えきれないくらいした。それなりに場数を踏んでいるんだよ」
「へえ」
それ以上の言葉が私には見つからなかった。
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