『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
「で、お前たちは借金の取り立て屋か?」
「ええ、まあ」

やくざ風の二人の名刺と顔を見比べながら、警官は調書を書いている。

「それから、あんたは?」
警官がパパに聞き、
「一応、フリーのライターです」
「ふーん」
いかにも怪しんでいる感じ。

「で?」
今度は私と敬さんの方を見た。

「この子は俺の娘です」
とパパが答え、
「じゃあ、あんたは?」
警官の視線が敬さんに移った。

ああ、マズイ。
こんなところで警察沙汰を起こしたのを病院には知られたくないはず。

「何か身分確認できるものはないのか?」
警官は敬さんの前に座り直し、完全に一対一の体制。

はあー。
敬さんの小さなため息が聞こえてきた。

「はい」
諦めたように差し出された身分証。

「えっと、杉原敬さん、26歳。住所は・・・」

敬さんの出した身分証と顔を見比べながら確認していく警官。

「職業は?」

あっ。
私の方が声が出そうになった。

「医師です」
「は?」
「私立病院の医者です」
「え?」

警官は少しだけ身を引いて、敬さんの全身を眺めた後、
「見えませんね」
はっきりとそう言った。
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