『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
綿のパンツにセーターを着て、ダッフルコートを羽織りスニーカーを履いた姿は医者どころかまだ学生のようにも見える。
私だって今の敬さんに「医者です」と言われたら、警官と同じ反応をしたと思う。

「一応確認してもいいですか?」
「え?」

警官の言葉に、今度は敬さんの方が反応した。
さすがに、警察から本人確認の連絡が病院へ入るのは困るだろう。
そこは止めないとと、私も身を乗り出そうとした。

「大丈夫です。病院のホームページで確認させてもらうだけですから」

ああ、なるほど。
病院のホームページにはドクターの顔写真も載っているはずだから、それを確認するつもりなんだ。

数分後。

「救命科の杉原敬先生。間違いないようですね。じゃあ、身分証をお返しします」
「どうも」
返却された身分証を受け取る敬さんは少し不満そう。

全員の素性が分かると事の経緯を聞かれ、あとは事件性がないとの判断ですぐに解放された。
未成年の私もパパが一緒だったためにママが呼ばれるようなことはなかった。
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