『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
そこは街のスポーツ施設に隣接した緑地公園。
田舎のあるあるらしく、やたらと広くて緑いっぱいの静かな場所。
きっともう少しすればお弁当をを手にした親子連れで賑わうに違いない。
子供の頃、私もパパとここに来た記憶があるのもの。
大きな像の形をした滑り台が好きで、何度も何度も滑ったっけ。
懐かしいな。
・・・あの日に戻りたい。

「どうした、大丈夫か?」
私の表情が曇ったのに気づいた敬さんが心配そうに背をかがめて見る。

「うん、平気」

「無理するな」

クシュッと敬さんが頭をなでる。

ウルッ。
一瞬にして目の前の景色が揺れた。

ヤダ。
泣かない。
泣きたくないのに・・・

パパと離婚したママと私は5年前まで二人で暮らしていた。
もちろんママの実家からの援助もあったはずだけれど、ママ自身も小さなカフェを営みながら働いていた。
とはいえ、素人の気が向かなければ休んでしまうようなお店が繁盛するわけもなく経営はギリギリだったみたい。
要はママの仕事に対する考えが甘かったんだろうと思うけれど、そのことに気が付かないママはすべてをパパのせいにして『私はなんて不幸なんだろう』と泣いていた。
私は、そんなママが嫌いだった。
だから、うれしい時以外は泣かない。絶対にママのようにはならないと心に決めた。
< 54 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop