『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
泣きそうな顔をした私を落ち着かせるためか、近くのベンチに2人で腰を下ろした。
風を避けるためにピタリとくっついて座ったから、敬さんから伝わる温もりが温かい。

「お父さんのこと、相談した方がいいと思うぞ」
「え?」

「あいつらはきっと、またお父さんに所に来るはずだ」

あいつらって借金取りのこと。

「真理愛だけではどうにもできないだろ?」

それはそうだけれど。

「このままじゃ、お父さんが追いつめられるだけだ」

確かにそうだけれど。

「お母さんに、相談しろ」
「イヤよ」
なぜか即答していた。

「他に頼る人はいないんだろ?」

そうだけど・・・

「ママには言わない」
「何で?」
「嫌いだから」
「はあ?」
意味が分からないって風に、敬さんが私の顔を覗き込む。

敬さんはママを知らないから。
だから「相談しろ」なんて適当なことが言えるのよ。

「ママに相談するくらいならその辺を歩いている野良猫相手に話す方がまし」

ムギュッ。

「痛いっ」
いきなり頬をつねられて、声が出た。

「どんな人でも親だろ。もっと大切にしろ」

フン。
それはきれいごと。

私の気持ちなんて誰にも分らない。
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