『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
「真理愛ッ」
𠮟りつけるような声で呼び、背後から腕をとられる。

「もう、離してっ」
私も敬さんを振り払おうと腕を振った。

「いい加減にしろ、親父さんがどうなってもいいのかっ」
「ええ、いいの。だからかまわないで。そもそも敬さんは無関係じゃない。うちの事情に首を突っ込まないでほしいわ」
怒りに任せてきつい言葉になった。

「じゃあ何で、昨日は自分を売ってまで金を用意しようとしたんだ?」
「それは・・・」

「このままじゃ同じことの繰り返しだろう?昨日はたまたま何もなかったが、この次は本当に自分を傷つけることになるかもしれないんだぞ」

そんなこと私だってわかっている。
次もまた敬さんみたいに良い人に出会うとは思わないし、下手すると犯罪に巻き込まれることになるのかもしれない。
それでも、

「もしそうなったとしても、敬さんには関係ない。自分を売ってパパが助かるならそれでいいじゃない。何ならこの足でお金持ちのおじさんを探しに行ってもいいくらいだわ」

これだけ言えば、敬さんは私を見捨ててくれるだろう。
とんだ不良娘だって呆れられるかもしれないけど、それでいいと思っていた。
しかし、
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