『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
病院と同じ敷地内にある高城邸。
建物は二つあり、一つは大先生の自宅で、もう一つが真理愛の住む家。
このあたりでは敷地内同居も珍しくないが、高城邸の規模はその中でも群を抜いている。

俺は高い壁で囲まれた高城邸から少し離れたところに車を止めた。
朝帰りした女の子を男が送ってきたことがバレれば真理愛も困るだろうと気を使ったつもりだった。

昨日は友達の家に泊ると言っていた真理愛。
「ママは私に無関心だから」なんて言っていたけれど、女子高生の朝帰りに無関心な親はいないはずだ。

「がんばれ、真理愛」
なぜかそんな言葉が口をついてでる。

ん?
俺の声なんて聞こえるはずないのに、入り口に向かう真理愛の足が止まった。

どうしたんだろう。
まさか怖気ずいたか?

どんなに強がっていても、やはり高校生。
叱られるのがわかっていて帰るのは勇気がいるのかもしれない。

気が付くと俺は車から降りていた。

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