Loves only you
「杉浦。」
そんな友紀の心境になど、お構いなしに、滝は呼び掛けてくる。
「今回の辞令は、きっとお前を大きく成長させる。間違いなくお前の為、そして会社の為にもなるいい人事だと思う。だが・・・はっきり言って、神宮寺の下にお前を送り出すことが、お前の為になるとはどうしても思えなかった。それだけが気がかりだった。」
「・・・。」
「だが、あの男は、結局プロジェクトから外れた。これで安心して、お前を送り出せる。お前は向こうで、自分の持てる力を思う存分発揮しろ。俺はそんなお前を応援してるから。」
そう言って、横の友紀を見た滝は思わず息を呑む。目にいっぱいの涙を浮かべた友紀が、こちらを見ていたからだ。そして
「バカ!」
と思わぬ言葉を投げつけられて、更に驚く。
「お前・・・確かにもうお前は俺の部下じゃないけど、ついさっきまで上長だった人間に向かって、いくらなんでもバカは・・・。」
窘めるように言うが
「だってバカじゃない!」
友紀にダメ押しされて、滝はグッと言葉に詰まる。
「なんであんな危ない橋を渡ったんですか!」
涙目で友紀に睨まれて
「お前・・・知ってたのか・・・?」
バツ悪そうに視線を逸らす滝。
「最後に村田さんが教えてくれました。」
「あのオッサン、普段は何もしないくせに、こんな時に余計なことを・・・。」
滝は思わず舌打ちする。
神宮寺が今回のプロジェクトから外れたのは、滝が神宮寺社長に直訴したからだと、友紀は村田から聞かされて、本当に驚いた。
「そんなことして自分の立場が危うくなったら、どうするつもりだったんですか!」
詰め寄るように言う友紀に
「もう1回、信じてみようかなって。」
「えっ?」
「『この世の中に、本当に悪い人なんかいない』って言葉を、俺に思い出させてくれた奴の為に、もう1度その言葉を信じてみようかと思ってな。」
そう言って、滝は優しく微笑みながら、友紀を見た。
「俺は関西にいた時、何度か社長表彰をされたことがあった。それで社長とも面識があったから、ダメ元で面談を申し込んだ。もちろん、一社員の分際でと門前払いされても仕方ないと思ってたが、社長は時間をくれた。だから思い切って、言ってやったよ。神宮寺将大がいかにクズでダメな奴かって。自分の息子である後継者をあそこまでけなされて、社長もさぞ腹がたったろうが、最後まで黙って聞いてくれた。」
「次長・・・。」
「ま、それに俺の言葉に耳を傾けてくれないバカ社長とドラ息子の会社なら、もう未練ねぇかなって気もしたしな。とにかくこれで、俺は上長として、喜んで、安心してお前を送り出せる。」
そう言って、滝は笑った。
そんな友紀の心境になど、お構いなしに、滝は呼び掛けてくる。
「今回の辞令は、きっとお前を大きく成長させる。間違いなくお前の為、そして会社の為にもなるいい人事だと思う。だが・・・はっきり言って、神宮寺の下にお前を送り出すことが、お前の為になるとはどうしても思えなかった。それだけが気がかりだった。」
「・・・。」
「だが、あの男は、結局プロジェクトから外れた。これで安心して、お前を送り出せる。お前は向こうで、自分の持てる力を思う存分発揮しろ。俺はそんなお前を応援してるから。」
そう言って、横の友紀を見た滝は思わず息を呑む。目にいっぱいの涙を浮かべた友紀が、こちらを見ていたからだ。そして
「バカ!」
と思わぬ言葉を投げつけられて、更に驚く。
「お前・・・確かにもうお前は俺の部下じゃないけど、ついさっきまで上長だった人間に向かって、いくらなんでもバカは・・・。」
窘めるように言うが
「だってバカじゃない!」
友紀にダメ押しされて、滝はグッと言葉に詰まる。
「なんであんな危ない橋を渡ったんですか!」
涙目で友紀に睨まれて
「お前・・・知ってたのか・・・?」
バツ悪そうに視線を逸らす滝。
「最後に村田さんが教えてくれました。」
「あのオッサン、普段は何もしないくせに、こんな時に余計なことを・・・。」
滝は思わず舌打ちする。
神宮寺が今回のプロジェクトから外れたのは、滝が神宮寺社長に直訴したからだと、友紀は村田から聞かされて、本当に驚いた。
「そんなことして自分の立場が危うくなったら、どうするつもりだったんですか!」
詰め寄るように言う友紀に
「もう1回、信じてみようかなって。」
「えっ?」
「『この世の中に、本当に悪い人なんかいない』って言葉を、俺に思い出させてくれた奴の為に、もう1度その言葉を信じてみようかと思ってな。」
そう言って、滝は優しく微笑みながら、友紀を見た。
「俺は関西にいた時、何度か社長表彰をされたことがあった。それで社長とも面識があったから、ダメ元で面談を申し込んだ。もちろん、一社員の分際でと門前払いされても仕方ないと思ってたが、社長は時間をくれた。だから思い切って、言ってやったよ。神宮寺将大がいかにクズでダメな奴かって。自分の息子である後継者をあそこまでけなされて、社長もさぞ腹がたったろうが、最後まで黙って聞いてくれた。」
「次長・・・。」
「ま、それに俺の言葉に耳を傾けてくれないバカ社長とドラ息子の会社なら、もう未練ねぇかなって気もしたしな。とにかくこれで、俺は上長として、喜んで、安心してお前を送り出せる。」
そう言って、滝は笑った。