Loves only you
「もう1つ。」


「うん?」


「さっき、さりげなく、私のこと彼女って言いましたよね?」


「言ったか?」


「間違いなく、『可愛い彼女』って。」


そう言って、滝を真っすぐに見つめる友紀。


「そうか、聞き逃さねぇな。」


「聞き逃すはず、ありません。」


「嫌だったか?」


「嫌です。」


「杉浦・・・。」


「私は何度もあなたにお気持ちをお伝えしたはずですけど、私はあなたから、何も言ってもらってません。だから、このままじゃ・・・嫌です!」


そう言って、潤んだ瞳で自分を見上げてくる友紀を見て


(本当に可愛過ぎるな、こいつ・・・。)


滝は思わずニヤけてくるのを、懸命に抑える。


「恋愛も結婚も本気で2度とごめんだと思っていたはずの俺の心を、お前は初対面の時から騒がせてくれた。」


「えっ?」


「最初のうちは、その理由がわからなかったけど、幼い頃、初恋の人が俺に教えてくれた大切な教えと同じ言葉をお前が口にしたのを聞いて、その人の面影をお前に見たからだと気が付いた。似てるはずだよなぁ、実の娘なんだから。」


「・・・。」


「だからと言って、お前とどうこうなろうとか、なりたいなんて気持ちにはどうしてもならなかった。だから遠ざけようとして、冷たくしたつもりだった。なのにお前は、何を勘違いしたか、俺との距離をどんどん縮めて来やがって・・・。」


そう言って、一瞬苦笑いを浮かべる滝だが


「今だから言う。その後の俺は、もうお前に、惹かれて行く一方だった。」


照れ臭そうに、でもはっきりと告げた。


「次長・・・。」


その滝の顔を、友紀は驚いたように見つめる。


「だが、それでもやはり、最後の一歩は踏み出せなかった。再会した明奈は、本当にかつて俺が愛した彼女に戻っていた。自分の過ちを心から悔い、俺に償いたいと思ってくれてるのも伝わって来た。でも、じゃなんで・・・結局そこに戻ってしまって・・・。だから、彼女を許すことはどうしても出来なかったし、お前を信じるのもやっぱり、怖かった。」


「・・・。」
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